野田地図

日本語/ENGLISH
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ザ・キャラクター


『世界に通用しないモノを創る』

私が引っ越し魔だった頃、新宿御苑の大木戸門の傍に住んだことがある。マンション名は、大木戸マンションだった。そこから次に引っ越した世田谷のマンションの名前が、「オオキッド(蘭の花)・ハウス」だった。せっかく引っ越したのに「大木戸マンション」から「オオキッド・ハウス」…すごく損をした気分になった。引っ越し魔的には…。
で、そんなことはどうでもいい。この話を、海外の人に話す時、どうやったってその面白さは伝わらない。ひとつには、日本語を知らない。そしてもうひとつには、日本文化を知らない。大木戸という響きが、どこか時代がかって聞こえ、それがオオキッドなどという小ジャレタ名前と重なる。あはは…と力なく笑えるのは日本人だけである。
再び世界に通用する文化を、日本から発信しよう…みたいなことを、誰が言ったのか知らないが、声高に叫ばれてから久しい。そして、それは「日本のアニメ」に代表されるようなものだ。みたいなことになってしまった。すなわち、文化的にシンプルに翻訳できるものばかりになった。
確かに、世界中の人間が、共通に味わえる文化があることは結構なことである。タイの役者たちがみな、ドラえもんの歌を歌えたり、英国の役者の子供が、ピカチュウのカードを集めていたり、微笑ましい。微笑んでもいい。
だが文化には、まったく違った一面がある。日本で育ち、そこで話されている言葉を、時間をかけて知っている者、つまりその土地の文化が体にしみ込んでいる者にしかわからないものがある。それは簡単には翻訳しにくい。伝えられない。こちら側も、時間をかけて、あれやこれやとやってみるが、向う側も時間をかけてくれないと駄目である。
われわれ日本人は、かなりの時間をかけて、西洋のコトバや文化を知った。知っている。そして未だに知ろうとしている。逆の回路があっていいはずだ。日本から発信するものにも、そうした手間暇をかけてやっと味わえる文化があっていい。
だから、自信を持って言える。この『キャラクター』は世界には簡単には通用しない。
日本語と日本の歴史や社会や日本人やら、そうしたものひっくるめて、日本を知ろうとしない海外の人には閉じられている。けれども表現としては世界に開かれていると自負する。だから、面白いと感じた海外の人はきっと、日本や日本語を時間をかけて知ろうとしてくれるかもしれない。
でもまずは、あれか、今の日本の人々が、どれだけ何を感じてくれるか。そういう問題かもしれない。
よろしくお願いしま~す。

野田秀樹