Introduction

野田秀樹より

2012年秋、この“エッグ”が上演された時、パリのシャイヨー国立劇場が、大層気に入ってくれた。とにかく、パリにエッグを持って来い、という話になった。何を、そんなに気に入ったのか?と問えば、この芝居には、ワレワレ(パリの人々、あるいは欧米人)の知っている日本としらない日本と知りたい日本とが、混在しているからだという。

うん、だったらもう一度再演し、日本も巡り、パリにも行こうと、役者、キャストの内で楽屋で盛り上がった。ふつう、こういうのは盛り上がりだけで、しぼむことが多い。だがこうして、オリジナルのキャストで再演できることになった。今の日本の演劇事情を思うと奇跡的である。その奇跡を見届けて欲しい。「また」にせよ「はじめて」にせよ。

野田秀樹

NODA・MAP史上初にして奇跡的な“事件”!!

最強の豪華キャスト。心に刺さる音楽。次々と姿を変える舞台装置。そして、予測不可能な驚愕の結末……。2012年、観客を熱狂の渦に巻き込んだNODA・MAP 第17回公演『エッグ』。何と初演を務めたメインキャスト8名が再び結集して、2015 年の幕開けと共に帰ってくる!

NODA・MAP第17回公演『エッグ』

妻夫木聡、深津絵里、仲村トオル、秋山菜津子、大倉孝二、藤井隆、野田秀樹、橋爪功。

いずれ劣らぬベテラン勢によるキャスト陣は、まさに理想的な最強の布陣そのもの。演劇界はもとより、日本のエンタテインメントシーンの前線で活躍し続けるこの精鋭たちが、満場一致で再結集を快諾したという事実こそが、『エッグ』という舞台の特異性を大いに物語っている。

もちろん、あの深津絵里演じる苺イチエの歌声も帰ってくる!『エッグ』の音楽を務めるは椎名林檎。苺イチエが歌う劇中歌をはじめ、『エッグ』の舞台音楽は、全曲椎名による書き下ろしだ。その変幻自在なコンポーズ能力が奏でる刹那と煽動のメロディは、『エッグ』という物語が持つ、唯一であり無二の価値をさらに決定付けている。

NODA・MAP第17回公演『エッグ』

さらに重要なポイントは、『エッグ』初演時から再演決定までの間に起こった大きな変化。――――そう、2020年・東京オリンピックの開催である!!劇中で度々連呼される“東京オリンピック” という台詞は、明らかに初演以上のインパクトと意味合いを以て、観客の感性を刺激するはずだ。

再演にして、リピートに非ず。我々が知っている/知らない/知りたい/知った気になっていた日本を内包した『エッグ』が、いま新たな胎動を始め、観客の前にその姿を現す。

――――東京、大阪、北九州、そしてパリで、新しく巨大な知の卵(『エッグ』) が産み落とされる!!2015 年版『エッグ』に、ぜひともご注目下さい!!

NODA・MAP第17回公演『エッグ』

音楽監督 椎名林檎

野田からのラブコールで音楽家・椎名林檎が、劇中歌をはじめ全舞台音楽を担当!作詞:野田秀樹、作曲:椎名林檎、歌:深津絵里。初演時も大きな話題となった、本作でしか観ることの出来ないコラボレーション。こんな贅沢な音は、この舞台上にしか存在しない!

私は、林檎さんを個人的に知らない頃から、とびぬけた才能を持った人だと思っていました。もしかしたら、ありとあらゆる調べを紡げる人じゃないか。それは、様々な調べを必要とする舞台の音楽にもってこいの人でもあるということです。林檎さんの音楽という新しい風が、自分の芝居の中に流れ込むことで、違った色の作品になっていくことを今から楽しみにしています。思いっきり林檎色に染まりたいです。

野田秀樹
(2012年 公演発表時のコメントより)

そして、もちろん注目すべきは類い稀な求心力を持つ、深津絵里の歌唱力。レコーディングを共にした椎名がその才能に惚れ込んだ。

意味深な質感に、断定的な量感、そして婀娜(あだ)っぽくうつろう色合い。唯一無二と書いてトクベツと読むこの声に、似合わない調べはありません。すてきな機会に感謝!

椎名林檎
(2012年 記者会見に寄せられたコメント『エッグの楽曲制作にあたって』より)

ABOUT Egg

架空のスポーツ種目“エッグ”に情熱を注ぎ、オリンピックで栄光を掴む日を夢見続ける二人のアスリート(妻夫木聡、仲村トオル)。そして彼らの間で歌い、踊り、そして心揺れ動く女性シンガーソングライター(深津絵里)。二十世紀最大のカルチャーとして君臨した“スポーツ”と“音楽”。そこに向けられる大衆の熱狂。愛情、嫉妬、私欲、時代。物語の表層は徐々に――それこそ卵の殻の如く――ヒビが走り始め、内包していた“真の姿”を観客の前にさらけ出していく……。

NODA・MAP第17回公演『エッグ』
  • 東北の田舎から上京してきた、自由奔放な新人アスリート・阿倍(あべ)比羅夫(ひらふ)に、妻夫木聡
  • 本作のヒロインとして歌い踊る、人気シンガーソングライター・苺イチエ に、深津絵里
  • “エッグ”日本代表の精神的支柱であるストイックなベテランアスリート・粒来(つぶらい)(こう)(きち)に、仲村トオル
  • 「世界の9割くらいのもの」を束ねる者の娘として“エッグ”を司るオーナーに、秋山菜津子
  • エキセントリックな存在感で粒来を慕う、日本代表のアスリート・平川に、大倉孝二
  • コミカルとシリアスの絶妙なスイッチングが冴える、苺イチエの振付師・お床山(とこやま)に、藤井隆
  • 狂言回しとして物語を怒濤の展開へと誘う、劇場案内係/芸術監督に、野田秀樹
  • 軽妙かつ重厚な存在感で、選手団を指揮する(きえ)()監督に、橋爪功